歯科衛生士の仕事は予防処置や診療サポートが主ですが、診療科目によっても仕事内容は違います。
転職・就職先を決める上で、経験のない診療科目の仕事内容が知りたい方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、矯正歯科の歯科衛生士の仕事内容について解説していきます。
矯正歯科は、実際に働いたことがないと歯科衛生士がどのように治療に関わるのかは未知ですよね。
色々気になる
私自身、矯正歯科での歯科衛生士経験があるので現場経験者的な視点も交えて説明します!
【本題】矯正歯科で働く!歯科衛生士の仕事内容7つ紹介
早速ですが、矯正歯科で働く歯科衛生士の仕事内容を解説します!
クリーニングや診療補助は一般歯科と同じように歯科衛生士が担当する職場が多いようです。
その他、矯正歯科特有の仕事もあります。
細かい仕事の範囲や内容は勤務先で異なりますが、以下のような業務を行います。
- 矯正のカウンセリングや説明
- 矯正に向けた精密検査や検査補助
- 矯正治療の施術の一部
- MFT(口腔筋機能療法)の指導
- 矯正経過観察の資料作り
- TBIやクリーニング
- 診療補助
矯正のカウンセリングや説明
矯正治療前のカウンセリングや説明、矯正スタート後の指導や説明も歯科衛生士が任せられる業務です。
- 患者さんの悩みの聴取
- プランや料金説明
- 矯正治療の流れの説明
- 治療中の注意事項や装置装着指導
矯正がスタートすると、患者さんとは長い付き合いになります。
矯正を検討している=お悩みがあるということです。
ヒアリングし、不安・疑問に誠実に向き合って説明することも歯科衛生士の役割です。
回答には歯科医師の診断や判断が必要な部分もあると思います。
医院ごとの業務フローに沿って、報告や相談も行います。
矯正に向けた検査や資料採得
矯正治療の計画を考えるための、資料採得や検査は歯科衛生士の業務です。
- 顔面や口腔内の写真撮影
- 模型作成のための印象
- パノラマや、セファロ、CT等撮補助影
- 口腔内のスキャン
- 歯周病検査
矯正治療をスタートする前に、必ず必要になるのが患者さんの検査や資料採得です。
印象やパノラマ設定、歯周病検査等は一般歯科でも行うので、経験がある方も多いと思います。
逆にセファロや矯正用の口腔内のスキャンは、矯正歯科特有の仕事かもしれません。
簡単に言うと首から上における顔の骨格を調べるためのレントゲン写真です。
顎の骨の大きさ、位置関係、口元と顔のバランス等を分析するために使用します。
歯科衛生士は位置づけや、データ画像の管理を行います。
口腔内スキャナーは、口腔内に入れて使える小型カメラのような装置です。
マウスピース矯正や自費の治療を扱っている歯科では、導入されている医院も増えています。
矯正治療では主にマウスピース作製用の歯型を採るために使用します。
その場ですぐに歯並びや咬み合わせの確認や治療後のシュミレーションが確認できるので、患者さんへの説明に使用している医院もあります。
矯正治療の施術の一部
矯正治療の計画を考え、ワイヤーの調整を行うのは歯科医師ですが、施術の一部は歯科衛生士が担当可能です。
具体的にはこのような施術を行います。
- ブラケットやアタッチメントを貼る
- 矯正用ワイヤーの交換や結紮
- バンドの装着
ワイヤーを使った矯正の場合、歯に「ブラケット」という装置を付け、ブラケットにワイヤーを通すことで力を加えて、歯を動かします。
ブラケットは専用のレジン等を使用して歯に貼っていきます。
ワイヤーはブラケットにしっかり固定するため、細い針金をブラケットに巻き付けて結ぶ「結紮(けっさつ)」をするのが一般的です。
モジュールと呼ばれる“輪ゴム”でブラケットとワイヤーを縛り付ける方法もあります。
その他、奥歯はブラケットの代わりにバンドを装着する場合もあります。
最近は、マウスピースを使った矯正もありますよね。
歯に透明なマウスピースを装着し、マウスピースを定期的に変えることで、歯を動かしていく矯正方法です。
マウスピース矯正では、歯に「アタッチメント」という、レジンでできた出っ張りを付けることがあります。
ブラケットの代わりに白いレジンの突起が歯の表面につくイメージです。
このような「アタッチメント」の接着は歯科衛生士に任されることが多いです。
また、患者さんへマウスピースの着け外し等の指導も歯科衛生士が行います。
MFT(口腔筋機能療法)の指導
MFTの指導も歯科衛生士の業務です。
MFTとは、簡単に言うとお口の周りの筋トレをしながら、指しゃぶりや口呼吸等の癖の改善を目指すものです。
主に成長途中の小児が対象です。
幼いうちから口腔習癖の改善を目指せば、将来、ワイヤー矯正などの本格的な矯正が不要になる可能性が高まります。
大人の場合も、習癖による矯正治療後の歯並びの後戻りを防ぐために指導を行うことがあります。
矯正経過観察の資料作り
矯正歯科ではたくさん資料をとります。
検査で撮影した写真もPCでまとめて管理します。
矯正治療の内容を資料にまとめる業務は、歯科衛生士が担当することが多いです。
矯正治療は長期間に及ぶため、治療中の状態を観察して治療計画について患者さんと情報を共有します。
TBI・クリーニング・診療補助
矯正歯科でもTBIやクリーニング、診療補助といった一般的な歯科衛生士業務は任されることがあります。
特に矯正中のTBIは、矯正治療の段階に合わせた指導や用具の提案が必要です。
例えば、スペース作りのため歯間にゴムを入れる場合もあります。
その間、その場所はフロスや歯間ブラシNGです。
普段の指導でフロスをおすすめしている場合は特に、注意して声を掛ける必要がありますよね。
それ以外にも、ブラケット周りは汚れも溜まりやすいので清掃方法の指導は必須です。
クリーニング時も工夫して清掃が必要になります。
矯正歯科の歯科衛生士の適性は?向いている人の特徴
矯正歯科の歯科衛生士に向いている人の特徴を見ていきましょう。
- 歯科矯正に興味があり、勉強熱心な人
- 患者さんのニーズに合わせたコミュニケーションがとれる人
- 小児の対応が上手な人
- 接遇スキルが高い人
- 専門性の高いスキルを身についけたい人
歯科矯正に興味があり、勉強熱心な人
矯正歯科では、一般歯科では携わらないような特有の業務が多いです。
具体的には、MFTや結紮やアタッチメントセットの手技などです。
学校でも詳しくは習わないので、自ら学ぶ必要があります。
また、ある程度矯正の知識を調べてくる患者さんも多く、歯科衛生士は様々な質問をされます。
患者さんに専門家としての情報を伝えられるかは、信頼関係を作る上で大切です。
普段から興味を持って最新の情報をチェックし、専門的な知識を高められる人は向いています。
患者さんのニーズに合わせたコミュニケーションが取れる人
矯正歯科では、同じ患者さんと長い付き合いになるケースが多いです。
1年以上あると、同じ患者さんでもニーズはその時々で変わります。
じっくり向き合って不安を解消したい時もあれば、要点だけ伝えて欲しい時もあります。
矯正の痛みや、装置のストレスで挫折しそうな時もあるかもしれません。
その時々で患者さんの要望や状況を汲み取り、最適なコミュニケーションが取れる人は活躍しやすいです。
小児の対応が上手な人
医院の立地によっても変わりますが、矯正歯科は小児が多い傾向にあります。
そのため、小児対応に慣れている人、好きな人に向いています。
お子さんは矯正中のモチベーション維持が難しいこともあります。
そんな時に上手く声を掛け、矯正治療が終わるまでサポートするのも歯科衛生士の役割です。
接遇スキルが高い人
矯正治療は高額なため、患者さんも医院選びには特に慎重になります。
患者さんからすると、上手い先生がいることも大事ですが、スタッフが親切かも気になるポイントです。
月1回程度は来院することになるので、居心地が良い医院がいいですよね。
接遇スキルが高い人は、丁寧で良い印象を与えられるので、患者さんからの評価も上がります。
専門性の高いスキルを身につけたい人
矯正歯科で働くと、一般歯科では経験できない矯正の専門的な業務に携われます。
歯科衛生士としての仕事の幅を広げたい人や、専門性の高い分野でスキルを上げたい人には適した環境です。
矯正歯科で働くメリットとデメリット
矯正歯科で働くメリット、デメリットをみていきましょう!
- 専門的な知識技術を身につけられる
- 患者さんの変化を見届けるやりがいがある
- 給与+アルファが支給される医院もある
- 急な残業が少ない
- 比較的アポイントが緩やか
- カリエスやペリオの患者さんを診れない
- 早いペースで仕事できなくなる
- 日曜、祝日も出勤になる
医院によりますが、矯正は自費治療のため担当者や新規獲得率に応じてインセンティブを支給する医院もあります。
頑張りが給与に反映されるのはありがたいですよね。
また、保険診療だけで経営する一般歯科と比べると、アポイントも緩やかな事が多いようです。
じっくり患者さんと向き合いたい人には良い環境ですね。
矯正専門の歯科の場合は、ペリオやカリエスの治療は行わない可能性もあります。
SRP等の技術を磨きたい人や、一般的な保険診療の症例をみたい人には向かないかもしれません。
一般歯科に戻りたくなった時に、仕事のペースについていけなくなる可能性も否めません。
また、矯正歯科は平日は学校や仕事がある患者層がメインになります。
日曜や祝日は出勤日としている医院が多いです。
矯正歯科で働く歯科衛生士の将来性はあるの?
矯正歯科で技術を磨けば、将来的にも活躍の場が広がります。
厚生労働省のデータからも、矯正を受ける患者さん自体が増加傾向にあるため、矯正歯科を行う医院も増えると予想できます。
平成29年 800名
令和2年 2,900名
3年で約3.6倍!
※ 厚生労働省 患者調査
また、令和4年歯科疾患実態調査によると、40歳未満の女性の約5人に1人は矯正の経験者です。
男性は30代で矯正を始める人が多いとわかります。
子供が多い印象の矯正歯科ですが、若い大人の男女にも矯正は人気ですね。
【要注意】矯正歯科の求人を探す時に失敗を防ぐポイント
矯正歯科で働いてみたい!と思った時どうしますか?
求人サイトは給与や勤務地、労働条件でフィルタリングできて便利ですよね。
間違いではないのですが、矯正歯科で経験を積みたいと考えているなら、これだけだと少し不足です。
以下のポイントも踏まえて、就職・転職先を探すのが失敗を防ぐコツになります。
- 診療内容や院長の専門分野をチェックしよう
- 転職エージェントを使い倒そう
- 3医院は見学しよう
診療内容や院長の専門分野をチェックしよう
矯正歯科といっても、実際の診療パターンは3つに分かれます。
求人サイトに載っていなければ、医院のホームページまで確認してチェックしてください。
診療内容を必ずチェックして、自分の考えている働き方に近いか確認しましょう。
矯正に力を入れている医院の場合、院長や常勤歯科医師が矯正が得意な先生であることがほとんどです。
メインは一般歯科で、月数回だけ矯正の先生を呼んでいる場合もあります。
転職エージェントを使い倒そう!
タイパ重視時代の現代では、転職エージェント(人材紹介支援)を使った転職をする人が増えてきました。
特に専門性の高い矯正歯科となると、自分のニーズに合う職場を洗い出す作業は中々大変です。
効率よく、多くの求人から職場探しをしたいなら転職エージェントにも登録しておいて損はないでしょう。
選択肢を増やしたいのであれば、複数登録してみましょう。
保有求人数がとにかく多いファーストナビ歯科衛生士+もう1社が無難です。
- 非公開の求人など、自分では探せなかった求人を見つけてもらえる
- 院内の雰囲気を事前に把握しやすい
- 聞きにくいことの確認や交渉、連絡をしてもらえる
- 基本無料で利用できるので、お試し利用もしやすく金銭的な損をすることはない
- 連絡がうるさいと感じる時もある
- 担当によってサポートのスキルに差がある
- 担当と相性が合わない場合もある
デメリット回避には、必ず転職活動の主導権は自分が持つこと!
3医院は見学しよう
歯科衛生士は売り手市場なので、応募したら面接や採用までが想像以上にスムーズに進みがち。
嬉しい反面、他と比べられなくなるデメリットがあります。
ただし、1医院だけ見て決めることはあまりお勧めできません。
すでに十分な情報があり、この医院こそ求めていた職場だ!という確証がある方は別ですが、比較対象となる医院を知ることでベストな選択ができます。
求人はたくさんあるので、3医院程度は見学してベストな医院を選んだほうが、後々後悔は少ないでしょう。
新卒、経験が浅くても働ける?
新卒や経験が浅い人でも、矯正歯科で働くことは可能です。
私も新卒から矯正歯科で働きました。
ただ、就職先は将来をよく考えて選びましょう。
- 矯正歯科しか診療科にない、専門医院は避ける
- 来院患者数が多いクリニックを選ぶ
新卒からでも充分働くことは可能ですが、以下のデメリットがあることも事実です。
将来転職したくなった時に、SRP等が経験できなかったことがネックになる可能性もあります。
(今後も矯正歯科1本で!と強い意志があるなら止めはしません)
そのため、矯正歯科しか診療科にない医院や1日の来院数が少ない医院は避けるのが無難です。
このあたりも、エージェントに協力してもらうと職場探しがスムーズです。
矯正歯科の歯科衛生士!リアルな仕事内容と適性 まとめ
ここまで、矯正歯科衛生士の日々の業務内容と、その仕事に求められる適性について解説しました。
- 矯正のカウンセリングや説明
- 矯正に向けた精密検査や検査補助
- 矯正治療の施術の一部
- MFT(口腔筋機能療法)の指導
- 矯正経過観察の資料作り
- TBIやクリーニング
- 診療補助
矯正歯科で通用するスキルを身につけると、将来活躍の幅が広がります。
矯正治療は長期にわたることが多く、患者さんとの関係を築きながら、変化を見守りたい人にとって、非常にやりがいを感じられるのではないでしょうか。
個人的にも、矯正歯科での仕事は保険診療だけでは感じられない良さがあると思いました!
ゴールに向かって一緒に頑張った患者さんが綺麗になるのは嬉しいですよね。
この記事を読まれた方が、最適な職場を探せますように。